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2011年10月24日

「高谷選手、宮田さん、川尻選手、そして僕。興行的なことを考えたら…」
リオン武インタビュー

FIGHT FOR JAPAN『DREAM.17』で行われたDREAMフェザー級ワンマッチで宇野薫を破ったリオン武にインタビュー。右ハイキックでKO勝利を収めた宇野戦、そして熱望する大晦日大会出場への思いを語ってもらった。

■「スイッチを繰り返す。右に回る」

──『DREAM.17』での宇野薫戦は見事なKO勝利でした。DREAMで2戦連続のKO勝利となりましたが、反響も大きいんじゃないですか?
リオン そうですね。やっぱりKO勝ちだと周りの人たちも喜んでくれますし、お客さんの反応を見てもそれは分かります。去年9月に初めてDREAMに出たときよりも、4月(修斗:土屋大喜戦)、5月(DREAM:松本晃市郎戦)と連続でKOで勝って「今回も期待してくれているな」というのを感じましたし、そういうあったかい反応をいただくと、自分の中のDREAMへの愛着というのもより深くなっていきますよね。最初、去年の9月に初めてDREAMに上がったときはデビュー戦みたいな感覚でしたから。
──デビュー戦みたいな感覚?
リオン ずっと修斗で闘ってきて、修斗のお客さんにとってもリオン武というのはお馴染みでしたし、僕もやりやすくて、こういうことをしたらお客さんは喜んでくれるだろうなということも分かっていたんです。でも、DREAMに初めて出たときは、全然違う雰囲気を感じたんですね。お客さんも僕のことを分かっていないし、僕もお客さんのことを分かっていないから当然なんですけど、初めて味わう感覚だったんです。でも最近は、DREAMで3戦させてもらって、だんだんとDREAMのお客さんにも僕の名前を覚えてもらってきて、僕もお客さんの反応が分かるようになってきて、お客さんといい関係が構築できてきているんじゃないかなという感じがしています。早くまたDREAMのお客さんの前で試合をしたいなって思いますね。
──大会終了後にその日の勝者がリングに上がりましたけど、「そのときの声援が一番大きかったのはリオン選手だった」と笹原EPもおっしゃっていました。
リオン あっ、そうでしたか! ありがたいですね〜! やっぱりいい試合をすればいい反応が返ってくるんだなと思います。
──“リオンの右”というのもDREAMファンに定着してきましたよね。
リオン そうですね。佐藤(大輔)さんにあのような映像を作ってもらったから伝わったと思うので、さすがだなと思いますし、本当に感謝ですよね。観る側も何か一つ必殺技があると観やすいと思うんですよ。ミルコの左ハイじゃないですけど。
──「いつ右が飛び出すんだ!?」ってワクワクします。今回はリオン選手が格闘技を目指すキッカケとなった一人である宇野薫選手との対戦でした。特別な思いもあったと思うのですが?
リオン そうですね。決まった日に思いました、「宇野さんとやれるんだな。俺も来るところまで来たなぁ」って。僕には兄貴がいるんですけど、その兄貴にも言われたんです。兄貴も格闘技が好きで、僕が99年の佐藤ルミナvs宇野薫を見て格闘技を始めた頃からずっと“格闘家・リオン武”を見てくれているんですけど、「お前、すげえな。佐藤ルミナ、宇野薫の両方と闘えるなんて、なかなかないことだと思うよ」って言われて、「確かにそうだな」って。でも、そこからは気持ちを切り替えて宇野薫という選手を倒すためだけに集中していたので、特に思うことはなかったんですけど、一瞬、バックステージで入場を待っているときでしたね。入場を待っているときにバックステージから煽り映像が見えたんですけど、ルミナさんと宇野さんの試合映像も流れたりして、ちょっとだけウルッと来ちゃったんですよ。いつも試合前は集中していて「よ〜し、いくぜ!!」って高ぶっているんですけど、ほんの一瞬ですけど、試合前に感傷的な気分になった。これは格闘技をやっていて初めてのことでしたね。でも、その一瞬だけでした。すぐに気持ちを切り替えて、リング上で宇野さんと対峙しても感慨深いような感情はまったくありませんでした。
──その宇野選手と実際に対戦した印象というのは?
リオン 宇野さんとは勝村周一朗さんのグランドスラムで、数える程度ですけど何度か練習したこともあるので、実際に肌を合わせた感覚というのは分かっていて、練習しているのを見たり、一緒に練習したことをもとに戦術を立てたんですけど、想像通りでした。想像通りでしたし、練習通りでしたね。
──試合後に「作戦がハマった」とおっしゃっていましたが、どんな作戦だったのでしょうか?
リオン まず、スタンドでの打撃戦だったら絶対に負けないと思っていました。それは相手が宇野さんだからとかじゃなくて、打撃には自信がありますし、自分の領域となるところなので、そこで負けたらもう話にならない。そして、宇野さんと闘って負けるパターンというのを考えたときに、片足タックルからバックに回られ、バックに回られたまま寝かされてチョーク、というのが一番のパターンだなと思ったんです。ウィッキー(西浦“ウィッキー”聡生)も宇野さんとやったとき(5月の『DREAM JAPAN GP』)に、タックルから後ろに回られて、両腕でたすき掛けにロックされた。そのままテイクダウンとも何とも言えないような感じで寝かされ、すっとチョークに入られたんですよね。僕の場合もやられるとしたらあれだなと思っていて、それをやられたら多分、一本取られちゃうだろうなと思っていたんですよ。あれは最近の宇野さんの必殺技で、実際、練習でも宇野さんにそれで一本を取られたことがありましたし、練習仲間にもそれで宇野さんにバンバン一本を取られたという選手もいて、これは要注意だなと。だから、まずはそこの対策ですよね。「スタンドで向かい合ったら自分は負けない」「片足タックルからの動きは危険」。だから、片足タックルをさせないようにいろんなことをしました。バックに回られないようにするのではなくて、片足タックルをさせないようにいろいろなことをしました。

──その「いろいろなこと」というのを解説していただけますか?
リオン 宇野さんの片足タックルというのは、相手の前足に来るんです。ウィッキーはサウスポーなので右足に、僕はオーソドックスなので左足に来る。前足への片足タックルから後ろに回っていくんですけど、その最初の片足タックルを潰そうと思って、僕は頻繁にスイッチを繰り返して狙いを定めさせないようにしていたんです。「いつもリオンは左足が前だけど……あれ? 右足が前?」という感じで、スイッチを繰り返してタイミングをずらす。それがまず一つ。あと、僕はオーソドックスで、宇野さんはサウスポーですよね。オーソドックスvsサウスポーだったら普通、オーソドックスの僕は左に回るのが常識なんです。でも、左に回るということは、自分の左足が前に出るので、片足タックルに入られやすくなってしまう。だから、僕は右に回っていったんです。
──サウスポー対策としては、左に回るのが普通ですよね。
リオン ええ。それはなぜかと言ったら、右に回ると相手の左ストレートをもらいやすくなってしまうからなんですけど、宇野さんに左ストレートをもらっても相討ちには持っていけると思っていたので、左ストレートはもらってもいいからタックルを防ごうと思って、右に回りました。要は片足タックルを防げば絶対に勝てると思っていたんです。逆に喰らったら負けると。じゃあ、片足タックルをもらわないようにしようとして、「スイッチを繰り返す」「右に回る」。あと、もし片足タックルを取られたときのことを考えて、バックに回られてたすき掛けされたときの対策と、寝かされたときの対策も一応考えていたんですけど、そういった状況にはなりませんでした。最初に右の連打で倒した後にパウンドに行ったとき以外、グラウンドの展開はありませんでしたからね。
──組みに来た宇野選手に対して、短い距離で右のパンチを3連打して倒したシーンですね。
リオン あの距離のパンチも得意なんですよ。
──3発とも手応えはあったんですか?
リオン 1発目、2発目も手応えはあったんですけど、当たり所が悪かったんですよね。頭のてっぺんとかに当たって。一応、効いていたと思うんですけど、そこから宇野さんが離れようとして、離れ際にアゴに当たったので後ろに倒れていったんだと思います。
──フィニッシュは右ハイキックだったわけですが、あのハイキックは同門のマモル選手から教わったと試合後におっしゃっていましたね。
リオン そうなんです。そうなんですけど、もうマモちゃんから500回くらい「あれは俺が教えた技だ」って言われたんですよ(笑)。
──500回も!(笑)。
リオン いや、もうほんとそれくらい言われています。だって、試合が終わってリングから控え室に戻るときから、「そういえば、あれは俺が教えた技だよな〜」って言い始めて(笑)。控え室に戻ってからも散々言うもんだから、コメントブースでは「『マモル先輩から教わった技です』って言おう」と思って言ったんです(笑)。
──舞台裏でそんなことがあったんですね(笑)。リオン選手のこれまでのキャリアでハイキックでのKOというのは……。
リオン ないです。修斗でハイキックでダウンを取ったことはありますけど、ハイでKOというのは初めてですね。そのダウンを取ったときというのは7年前、新人王の決勝戦で相手は碓氷早矢手選手だったんですけど、そのときとまったく同じハイキックなんです。右手を伸ばしての右ハイ。キックボクシングだったらサウスポーに対しての定番の技なんですけど、今回は対サウスポーの定番技として出したのではなくて、宇野さんは僕の右のパンチを警戒すると思ったので、右手を出せば宇野さんは左に避けるだろうなと。そこにハイを合わせようと思っていたんです。
──なるほど。
リオン 最初から右のパンチは当たらないもんだと思っていたので、考えていたのはその右ハイだったんです。そのハイがダメだったら、右のパンチも何個か手順を踏めば当たると思っていたので、それをやろうと思っていたんですけど、ハイで終わってくれました。ハイの前にもあるKOするための攻撃を出そうとしていたんですけど、これからもあるので今回はここまでにさせてください。

■「大晦日に出るためにDREAMに参戦したと言っても過言ではないくらい」

──これまでも繰り返しおっしゃっていますが、今後の目標はDREAMフェザー級のベルトですね。
リオン そうですね。今回勝って、また一歩近づいたなという実感はあります。
──『DREAM.17』前のインタビューでは「ここからはトーナメントみたいなもんで、勝てば上にいけるし、負ければ敗者復活にまわる」とおっしゃっていましたよね。となると……。
リオン チャンピオンが高谷(裕之)選手で、その次に宮田さん、川尻選手、そして僕。この4人で争っていくことになるのは間違いないですよね。そこで興行的なことを考えたら、高谷vs宮田は7月にやって、宮田vsリオンは去年やった。例えば、もし僕が川尻選手とやることになったら、「高谷vs宮田はこの前やったじゃん」ということになりますよね。
──そうなりますね。
リオン そういうことを考えたら、高谷vsリオン、宮田vs川尻のほうが面白いのかなって。まあでも、これは僕がどうこう言えることじゃないですけどね。僕は組まれたら誰とでもやります。
──宇野戦後に川尻選手の名前を挙げていましたよね。あれはどういった思いからですか?
リオン いや、単純に盛り上がるかなと思って(笑)。あの日、あの場、あのタイミングで何か一言を求められたら、ああ言えば盛り上がるかなと思ってですね。近くに川尻選手がいて、その川尻選手は同じ日に強いハンセンに勝って、そこでああ言えば盛り上がるだろうなっていう、単純にそれだけです(笑)。
──ついでに聞いちゃいますけど、今回フェザー級転向初戦を白星で飾った川尻選手の試合はどう見られましたか?
リオン 強いのは知っていましたけど、相変わらず強いなって思いました。サウスポーにスイッチしたり、さらに進化しているなって。ハンセンから一本取るってすごいですよ。まあ、リング上ではああ言いましたけど、特別すごくやりたいという気持ちは正直、ないんです。もちろん組まれたらやりますけどね。
──まだ大会名等、詳細は発表されていませんが、次の大会は大晦日になりそうです。
リオン 出たいですね。大晦日に出るためにDREAMに参戦したと言っても過言ではないくらいですから。
──リオン選手にとって大晦日の大会に出場するということは、どういった意味がありますか?
リオン やっぱり日本で一番、格闘技が注目される日だと思うんです。修斗のときに修斗をメジャーな存在にしたくていろいろ頑張ってきて、ルミナさんに勝ったり、ペケーニョ(アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ)に勝ったりしても、正直、世間の人には全然伝わらないんですよね。「修斗をメジャーにするには、このままではダメなんだな」と。「じゃあ、違うことをしなきゃ」と思って、DREAMに出たんです。その中でも一番注目されるのは大晦日なので、世間に修斗を知ってもらうためにも、大晦日には絶対に出たい。本来なら去年の9月に勝って、去年の大晦日にも出ている予定だったので、ちょっと一年遅れてしまいましたけど、今年は絶対に出たいです。
──確かに去年の大晦日に出られなかったのは残念だったかもしれませんけど、もし今年の大晦日に出場することになったら、3連続KOで大晦日を迎えるわけですから、その期待値は去年とは比較にならないと思いますよ。
リオン 僕もそう思います。去年はいろいろ苦しい思いをしましたけど、去年の苦労が今の3連続KOに繋がっていますからね。これは絶対にそう思うんですよ。去年の敗戦によってさらに実力も伸びましたし、今年の大晦日に出るべくして、去年の負けがあったのかなと感じています。もし大晦日に出場することができるなら、これまで通り必死になって闘って、大晦日でインパクトを残したいですね。