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2011年5月21日

「最近の青木真也は俺を超えている……!!」
ウワサの青木親子インタビュー【『go fight』番外編】

ただいま発売中の格闘技専門誌『go fight』(vol.1)にて掲載されているDREAMファイター・青木真也のこれまでの人生に迫った超ロングインタビューが話題だ。静岡県の裕福な家庭にひとりっ子として生まれ、贅沢な生活を送り、豪快な父の破天荒過ぎる教育方針のもと、二人三脚で学校と闘い、柔道を習い始める──。その少年時代のエピソードはすべてが強烈で、現在の青木の人格はいかに形成されたのかが理解できる内容となっている。今回、その青木親子をキャッチし、あらためて「青木真也」という人間を作り上げた男・青木正(ただし)氏の素顔に迫ってみた。【聞き手:井上崇宏(ペールワンズ)/構成:『go fight』編集部】

■「コイツを人様から理解されないような男に育てたのは俺だっちゅうことか!?」

青木正(以下、パパ) どうも、遅くなりましたっ! 静岡からやってまいりました、ごくごく普通の真面目な自由業者、青木正ですっ! 善良な一般人でございます!
青木 マジすか学園……。
──アハハハハ。お父さん、今日はよろしくお願いいたします。
青木 ゴールデンウィークだからってことで、東京に遊びに来てるんですよ。
パパ 待った? いや、サンジャポ観てたら遅刻しちゃったよ!
──まったく問題ナシです! しかし、ここまで「TAP OUT」のTシャツを完璧に着こなしてる日本人を初めて見ましたよ(笑)。
青木 ヤバいでしょ?(笑)。
パパ いやいや、おべっかはいらん! そんなことより本題だ。読ませていただきましたよ、ゴーカート。
──お父さん、『go fight』です。
パパ いやね、周りの人間がコイツのインタビューを読んで「かなりおもしろい」ということを言っていたんでね、「そうか」と思って期待して読ませてもらったんですけどね。いったいどこがどうおもしろいのか、俺にはちっとも分かりませんでした!
──アハハハハ!
パパ 昨晩もちょうど家族でそんな話になったんだけどよ、あの話の中でどこにおもしろい部分があったのか俺にはよく分からないんだね。アレに載ってることはぜ〜んぶ普通の話だ。おもしろいところは特になかったねえ。
青木 まあね、青木家が普通だと思っていたことが、世間一般じゃまったく普通じゃなかったっていうことだよね(笑)。
パパ ねえねえ、俺のどこがどう普通じゃないの?(キョトンとした表情で)。
──キタキツネばりのいいキョトンですねえ(笑)。まず、日本の格闘技界において青木真也というトップファイターには熱狂的なファンがいる一方で、なかなか彼のことを理解できない、あるいは支持できないという人も大勢いるんですね。
パパ うんうん。それでアレか、コイツを人様から理解されないような男に育てたのは俺だっちゅうことか!?
──ひょっとしてそうかもしれない、という疑いが出始めた感じですね(笑)。
パパ なんでえ? だってさ、俺以上の豪傑なんて何十人と見てきたよ? たしかに最近、自分が58になろうとしているところで「豪傑っていうのが世の中にだんだんいなくなったなあ」とは感じるけども、俺らの30代、40代のときには一般人の中でも素晴らしい豪傑がたっくさんいたからね! 見ず知らずのヤツだろうが近くにいたらさ、「おめえっちも仲間だ! ここはみんな俺が払うわ!」くらいのヤツは普通にいたんだよ。それがバブルだっていったらバブルなのかもしんねえけどさ。
──なるほど。前田日明が言う「ヒョードルより強い選手はロシアにはゴロゴロいる」みたいな感じですかね。
パパ だから俺なんか可愛いもんだっての! まあでも、今でも羊の皮をかぶった狼みてえな連中はいっぱいいるだろうな。何十億も稼いでるヤツらでよ。ただ表に出さねえってだけで、豪傑っていうのは今もいるはずよ。(青木を見ながら)豪傑かどうかは知んねえけど、なんでも表に出しちゃうバカもいるけどよ!
──アハハハハ。
パパ だからコイツがガキの頃はよ、母ちゃんが毎日のように説教していただよ! 「自分をよく見せな」って。「わざわざ悪く見せる必要はないよ」ってよ!
──なるほど。
パパ だけど、かならず悪く見せちゃうんだよな。コイツは性格が天の邪鬼だから。逆によけいにわざと悪っぽく見せちゃうってところはあったよね。普通はさ、特に女の子なんかは自分を上手に見せるでしょ、本能的に。男はなかなかできねえかもしれねえけど、最近は男の子でもそういうのが上手じゃん。ゴマをするっていうか。まあそれは人それぞれの生き方だけどな。でも、そういうのコイツは大っ嫌いだから! 「好きか、嫌いか」しかないんだから。「どちらでもない」というのはないんだよ。それは俺もコイツにはよく言った。
青木 なんか言ったっけ?
パパ 言っただ! 「好きか嫌いかの二つじゃなくて、『どちらでもない』ってのがあんだろ?」って。「この人は好き」「あの人は嫌い」じゃなくて、「どっちでもねえ」って人もいるだろって。そしたら「いねえ」っつうんだよ!
青木 あー、なんかそんな話したな。
パパ 本人が「いねえ」って言うんだからしょうがねえよな、もう(笑)。ずうっとそうなんですよ。だけど、そんなコイツでも最近はちょっと大人になったかなってのは思うけどね。雑誌とかのインタビューを読んでも、丸くなったというか、「考え方が俺を超えてるな……」っていうか。
──あっ、最近の言動から父親超えを感じますか?
パパ 感じる感じる! 俺はどっちかというと、まだ治らねえから(笑)。
──アハハハハ。ちゃんと高い壁でいてくださいよ(笑)。
パパ 俺はいまだに母ちゃんと喧嘩すると、外にいても「帰る!」つって帰っちゃうんだけど、コイツはもう自分を抑えるってことを知ってるよね! 「ああ、外に出してるだけの価値はあったかな」って思うよ。遠目からじゃ勝手気ままにやっているように見えても、どんなにご苦労ナシに見えてもさ、そうでない部分もあんのかなって。てめえで苦労をしてみて、自分の周りが大事だということに気がついたのよ。それで周りを大事にするようになってきたんだよ。口で言ったところで分かんねえヤツだけど、自分が痛い思いをして血を流して、汗を流して、失敗をして、そこで初めて気がつくってヤツだからさ、手が掛かんだよ。ちょっとションベン!

■「スポーツはセンスじゃない! いかに親が一生懸命面倒を見るかだ!」

──お父さん自身はどんな子供だったんですか?
パパ 俺がまた素行が悪すぎてまったく相手にされなかったんだよね!(笑)。
──親からですか?
パパ そう! 中学から高校くらいまで。でも当時の親はみんなそうだけどね。俺は昭和28年の生まれだけど、それ以前の親というのは高度経済成長で子供の教育なんて、みんなそんな感じで放ったらかしだよ。あの時代は自営の連中がいっくらでも儲けてた時代で、俺が物心ついたときにはウチにクラウンがあっただもん! 小学3年くらいの頃にはもうあった!
──「いつかはクラウン」っていうCMがありましたけど、「いきなりクラウン」だったんですね(笑)。
パパ そう! 笑っちゃうよな! 出たばっかりのクラウンが家にあっただから。トラックもまだ満足にねえような時代にさあ、我が家にはクラウンがあったんだから、カネはあっただろうな。
──だけどお父さんの場合は、青木選手が生まれて、わりと子供の動向をキッチリ見るという教育ですよね。
パパ そうだね。ゴーカートにもチラッて書いてあったけど、俺自身は3人兄弟の末っ子でさ、真ん中の兄貴が野球をやっていて、地元の高校野球ではもう有名で天才呼ばわりされていた人なんだよね。セカンドを守っててさ、甲子園で準優勝までしたんだから!
──それは凄いですね!
パパ バリバリだよ! でさ、その甲子園に行くときにやれ遠征だ、近所の連中も応援に連れて行くだのなんだので、バスをチャーターしたりして600万も遣ってやがるんですよ、ウチのじいさん(笑)。
──高校野球の応援で600万も!
パパ 当時で600万だから、今だったら2000〜3000万ぐらいのカネをドンチャン騒ぎして遣っちゃってんの!(笑)。
──ひと夏の思い出に(笑)。
青木 ファンタジーだよなあ。
パパ だから3番目の俺なんていうのはもう鼻にも引っ掛けられない! じつは俺も中学のときに野球をやっていてさ、まあ能力がなかったのも事実なんだけど、挫折してたもんで、鼻にも引っ掛けられなかった。
──それでよけいに育児に熱心になられたのかもしれませんね。
パパ だから子供っていうのはさ、親が多少手を掛けてやってよ、上手に方向性さえ見つけてやれば、いくらセンスのねえ子だって適当なレベルにまではいくんだよ! これが俺の考え方! 教えるのがうまいヤツを探してきてコイツに付けたり、コイツが興味のある本なんかはもう全部買ってやった。最初は俺自身が球技で挫折してるもんだから、バスケットなんかもいいかなって思ったこともあったんだよ。コイツのちいせえときの動きとかを見てさ。だけど、バスケットより柔道のほうがおもしれえかなって思ってさ。
──それはお父さんジャッジで?
パパ そうそう、俺が見ていて。だけども、あとで初めて知ったんだけど、バスケットと柔道の動きって似ている部分があるんだってな! 俺も見る目があるよなあ!(笑)。
──青木さん、そうなんですか?
青木 たぶん。やっぱバスケは横の動きだから、クロストレーニングとしてもいいんですよね。
パパ バスケットもヒザとか足首の故障が多いし、柔道もそうでしょ? 動きが似ている部分があるんだってよ!
──じゃあ、青木選手はバスケをやっててもけっこういいところまで行ったかもしれないですよね。
パパ それは違うよ、ゴーカート!
青木 親父、この人は人間だよ! クルマじゃねえ(笑)。
パパ それがダメみたい! やっぱコイツは性格が攻撃的だからバスケットはダメみたいだね。喧嘩になっちゃう。
──あっ、たしかに集団競技には向いてないですよねえ。
青木 間違いない。
パパ チームワークはダメだわな(笑)。そこの性格は分かってて、やっぱコイツは個人競技だろうなと思って柔道を始めさせたんだよ。それで、親が一生懸命面倒を見てやれば、絶対にある程度のところまでは行くとは思ってた。
──そこは確信があったわけですね。
パパ あった! ホントに俺の兄貴2人は凄いんだよ。ちょっとゴルフをやらせればすぐにシングルまで行っちゃうヤツらなんだけど、俺はまったくダメなのね。ヒザが硬いからか知んねえけど。だから「センスがないね」って軽く言われちゃうんだけど、スポーツはセンスじゃないんだっての! バカ言うなっての! 
青木 親父、だんだん興奮してきたな……(笑)。
パパ 「親や周りが見てやれば、適当なレベルまでは絶対に行く」というのが俺の持論なの! だから、俺がよかれと思ったやり方をコイツに刷り込んだことは事実! コイツに買ってやった本を俺も読んでみてさ、これはいいなと思ったことを取り入れてやらせてみたりすると、コイツもけっこうやるんだよ。完全に人の受け売りだけどさ。
──じゃあ、お父さんも格闘技関連の本を読み漁ったんですね。
パパ 読んだね!
──印象に残っている本はありますか?
パパ けっこうあるよ! やっぱ山下泰裕先生とか柔道関係者の本は多いよ。(急にヒソヒソ声になり)たださ、ああいうのは本当に自分が書いたかどうかっていうのは疑問だよな……。あれはやっぱガチンコじゃなかったりするんですか……?
──知りませんよ(笑)。
パパ 「こんないいこと、絶対に本人が考えてねえだろ!」と思うもんな。柏崎克彦先生はちゃんと自分で考えてると思うけど。
青木 柏崎先生だけはガチ(笑)。


■「笑っちゃうよ! 日本の教育界もたいしたことねえなって話よ!」

──それと、このあいだ青木選手から聞いて衝撃的だったのは、学校の先生に向かってお父さんが教育論を説くという。よく担任の先生をシメに行ってたみたいですね。
パパ それは間違いだ!
──えっ、間違いですか?
パパ だから、あんなの先生じゃねえって言ってんの! 先生なんてのはアテにしないほうがいいよ。あの連中はさ、子供達の個々の人間性を見て道を説いてるわけじゃねえんだから! だから、どれが正しくて何が間違っているかっていう基準だってアテにはならん! 実際に「先生」って呼ばれるほどの人物が何人いるか? ねえ、何人いるのさ、ゴーカート!
──わ、わかりません!
パパ 柔道の会場で生徒をバンバン殴っていた先生もいたけどさ、殴って強くなるなら、みんな強くなるっての! そうでしょ?
──そうですね。
パパ 小学校の先生って、たしかにめんどくせえことは事実だよ。クラスに30何人いてさ、30何人全員がこっちを向いてくれなきゃ困るわけだから。ただ、やっぱひとりぐらいは反対側を向くヤツがいるわけ!
青木 俺だ(笑)。
パパ そんなヤツがいるとさ、先生からしたらめんどくさくなっちゃうじゃん。だから潰しに掛かるわけだよ!
──先生が青木潰しに(笑)。
パパ そう! だから、「おもしれえな」って発想をしてくれりゃあいいじゃん!? 「コイツ、普通じゃねえな。ひとり、おもしれえのがいるな」っていう発想してくれりゃあいいじゃん!? だけど、真面目なら真面目な先生ほど、排除しに掛かっちゃう。最初っから「悪いのがいる」っていうふうに見ちゃう。そんな先生がのちに教頭になり校長になっていくわけだからさあ。笑っちゃうよな! だから日本の教育界もたいしたことねえなって話よ!
青木 いきなり国に牙をむいたな(笑)。
パパ いま流行りのなんとかペアレントっていうのがあるでしょ?
──モンスターペアレントですね。
パパ 俺はそのモンスターとは違うだよ! 俺は全然学校とはタッチしねえから! 向こうから呼び出されたときだけタッチするけどな。なあ、お前が1年生とか4年生のときの担任はちょっと変なヒステリー先生だったよな? 
青木 ま、まあね(笑)。
パパ ホントにおかしかったよな! で、5〜6年生のときの担任はさ、コイツが5年になったときに俺を学校に呼んでさ、「僕に任せてくれ」って言っただよ!
──ほう!
パパ 「真也君は悪い子じゃないから、僕に任せてほしい」と! 「おお、若い先生で久しぶりにいいのに当たったかな!?」と思ったよな、こっちは!
──なかなか見どころのある教師だと。
パパ って思ったら大きな間違いでさ! 5年と6年は同じ担任だったんだけど、6年生になったらソイツ、「やっぱり僕の手に負えません……」って言い出したんだよ! 「おめえ、俺に『僕に任せろ』って言った以上、卒業まで責任持てよ!」って言ったら、「いや、自分の手にはもう……」とか言いやがってさ! でさ、そういうやり取りを俺とその担任とでやってたらさ、コイツは俺の横で急にいい子ちゃんになっちゃってんだよ(笑)。
青木 憶えてねえな(笑)。
パパ で、先生も目を疑っちゃってさ! 「お父さんの前では真也君、言うことをよく聞きますねえ!」なんて言うから、「そうだよ! こんなヤツに言うことを聞かせらんねえなら、お前も教師なんかやってたってしょうがねえだろ!」って言っただよ、そんとき。だから、「もういいわ。もうコイツには触らなくていいや。そのまま卒業させろ」って。で、あとで聞いたらさ、コイツは完全に仲間はずれみたいにされてて、その先生からもイジメられてたっていうんだから! 
青木 素敵だわ〜。
パパ 素敵だよね!!
──今の話のどこがどう素敵なんだか(笑)。

■「いくら叩いてくれてもええけど、最後の芽まで摘み取ってくれるな」

パパ だけどよ、「万引きとイジメだけはするな!」ってのがウチのルールだったからな! 盗みとイジメだけは絶対に許さない! だから俺、コイツには「万引きとイジメで呼ばれても、俺は引き取りに行かねえぞ」ってことは言ってたの。「もしやっても引き取りに行かねえから、そのまま死んじゃえ」って言っただよ。
青木 それはいつも言ってたよな。
パパ 万引きなんかやりやがったら、かっこ悪くて迎えに行けねえよ!
──でも、青木家だけは駄菓子屋とかでもツケがきいてたんですから、万引きしようがないですよね?
パパ カカカカカ! ちげえねえ!(笑)。
青木 駄菓子屋じゃツケがきくし、欲しいもんは親父が何でも買ってくれるから、万引きなんてまったくする気が起きなかったっスね(笑)。
パパ そういえば、コイツが「俺、小遣いがほしい」って言い出したときがあったんだよ。「はあ? いくら欲しいんだよ?」って聞いたら、「みんなは月に3000円くらい貰っているらしい」って言うから、俺、笑っちゃってさ! 「母さん、こいつ3000円でいいってさ!」って言ったら、母さんも「そりゃあ安上がりでいいじゃん!」って笑ってよ。「よ〜く考えてから決めたほうがいいよ」って言ってさあ(笑)。
青木 あったなあ。すでに余裕で3000円以上遣ってたことに気づかなかったんだよな(笑)。
パパ それで3日くらいしたらよ、その話はなくなっていただ。バッカだよなあ!(笑)。
青木 だからね、僕は今でも街で親におねだりしている子供の姿を見ると、「買ってやればいいのにな」とか思っちゃうんですよね。
パパ 俺の教育理論では、あれはまったく無意味だよ! コイツから「買ってくれ」って言われて、こっちは買ってやらねえ気分はねえのよ。自分の物は買わないでもね、子供には何でも買ってやったほうがいい。
──でも、子供ってオモチャでも何でもすぐに飽きちゃうじゃないですか。それでも買ってあげたほうがいいんですか?
パパ 買ってやりゃあいいだよ! 子供が「欲しい」って言えば、どんどん買ってやりゃあいい! 買えねえような金額だったらしょうがねえよ? でも、自分がちょっと我慢すれば買えるんだったら買ってやりゃあいいんだよ。自分の子供だもん! だからって金遣いの荒い大人になんかならねえって。だってコイツ見ろよ。すんげえシビアじゃん、今。
──たしかにそうですね(笑)。
パパ だろ!? そんなのは全然別だよ。幼児期にパッパパッパとカネを遣うヤツが大人になると無駄遣いの先生になっちゃうなんてのは、それは違う! なんで、こいつがこんなにケチになっちゃったのか、俺は今でも不思議だもん。
──青木選手はそんなにケチですか?
パパ どケチよ! だってさ、きのうだって4000円くらいの晩飯代をさ、平気で俺に払わせるんだぜ!?
青木 いや、違うだろ。「俺が払うよ」って言ったら、「いや、俺が払う」って言ったんじゃん。
パパ だってよ、家族でメシ喰いに行ってよ、4000円の金をさ、俺が払わないわけにいかねえじゃん!?
青木 じゃあ、それでいいんじゃねえか!(笑)。
パパ こっちは孫と初めてのメシなのにさ! 「じいちゃん、4000円の金も払わないの?」なんて思われたかねえよ! だから「いいよ、俺が出すよ」って言ったら、「あっそう。ご馳走さんね」ってすぐに引き下がりやがって! まあ、別にいいんだけどさあ。
──ホントにどうでもいいですよ(笑)。しかし、お二人はホントに仲がいいですよねえ。
パパ 俺らはある程度、親と子という部分はあるんだけど、俺は親子で友達付き合いってのは好きじゃねえんだよ。
──友達のような親子関係は好きじゃない、と。
パパ だって親と子は別なんだから。友達付き合いなんかしちゃ絶対にダメだというのはあったんだけど、小学生のコイツと俺とはある部分ではタメだったよな。
──小学生時代の息子とタメ線って、お父さん、どれだけ子供なんですか(笑)。
パパ カカカカカ! まあ俺が大人のレベルに達していねえってことだよな! だから最近特に思うのは、さっきも話したけど、もう俺はコイツに負けているかもしれねえな。俺はご苦労ナシに育ってきたからこらえ性がねえなって自分でも思うもん。だけどコイツはあっちで叩かれ、こっちで批判されたりしたのが肥やしになってんだな。
青木 そうなのかな?
パパ だから、ファンの方とかアンチの集団がいくら叩いてくれてもええ。ただ、「最後の芽まで摘み取ってくれるなよ」って。芽が残りゃあ、またひとつ勉強してね、コイツは大きくなって這い上がるから! 
──「最後の芽までは摘んでくれるな」っていい言葉ですね。
パパ だってコイツはだんだんと自分で勉強しながら作ってきた部分はあると思うからさ。最近の雑誌でのインタビューを読んでも、逆にこっちが共感しちゃう部分があるもんね。「なるほどな。成長したんだな」って思うことも多い。やっぱりコイツも結婚したってのもあるし、子供ができたっていうのもあると思うんだけど、変わってきたなって思って。
青木 でも俺は批判とか全然へっちゃらなんだよね。
パパ だけどよ、今って何でも徹底的にやるじゃん。
──そうですね。しかも冷やかしでやったりもするから怖いんですよね。
パパ 喧嘩でもなんでもそうだけど、最後の最後までやっちゃダメだって。行きがかり上、もしそうなっちゃったとしても、どんなに嫌いなヤツだったとしても、そこまで追い込んじゃダメだ。悪魔じゃねえだから、追い込みをかけてどうすんだよってのはあるよね。
──はい。
パパ でもさ、やっぱり俺はネットなんかで名前も名乗らずに人のことを批判するっていうのは嫌いだね。文句が言いたければ、直接言いに来ればいいじゃんね。
青木 あのね、俺はそこはもう、2年くらい前に通った。
パパ えっ、通過してましたか!
──「してましたか」(笑)。
パパ まあ気にするこたねえでしょうけど、変な話だよねえ。俺が古い人間なのかねえ?
──子供がバッシングを受けるときっていうのは、親としてはどんな気持ちなんですか?
パパ そりゃあ、気分は悪いわなあ! しっかしお前は2年前に通過してたかあ。
青木 あのさ、それは同業者でも本人に直接言わない時点で、俺からすると陰口なの。同じ格闘家でも、雑誌とかのメディアを使って言い合ったところでそれも陰口なんだよ。会見とかリングの上で直接「この野郎!」って言えばいいんだよ。いちいち陰口を相手にしてたら疲れちゃうじゃん。そんな感じ。
パパ そっかあ、いろいろ難しいんだな……。ま、俺も陰口は好きだけんな。
──お父さん、ここでペロっと「俺も陰口が好き」って言われると、これ、まとめようがないです(笑)。
パパ だって人間だから、悪口とか陰口は大好きだよお(満面の笑みで)。どっちかと言うと、揚げ足取りとかは趣味だよ!
青木 マジすか学園……。
パパ あ〜、ちょっとサンドバッグを叩きたくなったな。
──いきなり!?
パパ おい、グローブはどこにあんの?(と、キョロキョロと周囲を見渡しながら席を立つ)。
青木 ……ウチの親父、キテるでしょ?(笑)。
──いや、凄い! そばにいるだけで凄まじいエネルギーをビンビン感じますよ。まるでご神木みたいですよ。
青木 それ、よく言い過ぎっしょ。「TAP OUT」のTシャツを着たご神木なんてねえって!(笑)。

■格闘技専門誌『go fight』Vol.1
◎発売日/2011年4月20日より絶賛発売中
◎定価/980円(税込)
◎発行所/スコラマガジン
※DREAMファイターからは青木真也のほか、宮田和幸、菊野克紀のインタビュー、そして桜庭和志と阪神タイガース・下柳剛投手の親友対談も掲載されているぞ。