- 2011年8月3日
「世界チャンピオンになって、最高の一年にしたいです」
バンタム級日本トーナメント優勝者・所英男インタビュー- 『DREAM JAPAN GP FINAL -2011バンタム級日本トーナメント決勝戦-』で今成正和を下し、バンタム級日本トーナメント優勝を果たした所英男にインタビュー。日本トーナメントを振り返るとともに、9・24FIGHT FOR JAPAN『DREAM.17』(さいたまスーパーアリーナ)より開幕するバンタム級世界トーナメントに向けての意気込みを語った。【取材日:2011年7月26日】
■「ベルトないくらいがちょうどよかったのかもしれません」
──バンタム級日本トーナメント優勝、おめでとうございます! 錚々たるメンバーが揃う中での優勝。試合後はあまり実感がないということをおっしゃっていましたが、今はどうですか?
所 人にお祝いをしてもらったり、お祝いの連絡やメールをもらうと「ああ、優勝したんだな」と思うんですけど、そうですね……ベルトがないので(苦笑)。
──やはりベルトがないと実感がわきにくいですか。
所 いや、う〜ん……まあでも、優勝しても満足はしていないですし、9月にはもう世界トーナメントが始まるので、すぐ頑張らなきゃなという感じなので、ベルトないくらいがちょうどよかったのかもしれません(笑)。
──むしろよかったと(笑)。
所 あったら何もする気力が起きなかったかもしれません(笑)。
──5月に2試合、7月に1試合、1カ月半の間に3試合となりましたが、ここまでの連戦というのも久々ですよね。
所 20代のとき以来だと思います。リトアニアに行って、帰ってきてZSTに出たこととかありましたけど、本当に久しぶりですね。
──コンディション的には問題なかったんですか?
所 5月の大会が終わってから丸々1週間休んで、そこからまた引き続き練習していたので、減量も含め、コンディション自体は悪くなかったです。今、北島康介さんも見ているトレーナーの方にフィジカルを見てもらっていて、その方のアドバイスのおかげで計量もうまくいっていますし。この前の試合の最後のほうはちょっと疲れちゃったところがあったんですけど、それは今成さんも一緒だと思って頑張りました。
──バンタム級日本トーナメント1回戦から振り返っていただきたいんですけど、1回戦では前田吉朗選手と対戦しました。
所 前田選手との試合は、誰も僕が勝ったと思っていないと思うんですよね。前田選手のアクシデントで僕が勝ったという感じなので……。まあ、トーナメントを勝ち上がれたのは嬉しいですけど、スッキリはしていないですよね。
──前田選手の怪我は事前に知っていたんですか?
所 今だから言えるんですけど、野木さん(野木丈司トレーナー)にバンテージを巻いてもらっているときに、スタッフの方から「すみません。向こうで巻いてもらってもいいですか?」と言われて移動して巻いてもらっていたんですけど、そうしたらうめき声が聞こえてきたんです。もう完全に前田選手の声で、何かあったなというのは分かって、「試合できるのかな?」と思って……。でも、前田選手のことはわかっていましたけど、頭の中で「それは関係ないこと」と思って、セコンドが立ててくれた作戦通りに闘おうと思っていたんですけど、全然違うファイトをしちゃったという……(苦笑)。
──真っ向勝負に行きましたよね。
所 大会前から「いい試合になるんじゃないか?」って期待されていたので、欲が出たというか、そういうのが出てしまったところもあると思います。その試合の後、セコンドから怒られたんですけど、それがあったから思い直して準決勝ではちゃんとセコンドの指示通りやれたんで、悪いことだけではなかったんですけどね。
──準決勝は山本篤選手と激突。見事リベンジに成功しました。
所 そうですね。一日2試合の2試合目なのに集中力がよくもったなというのと、3年前の9月(『DREAM.6』)に山本選手に負けて、野木さんのボクシング合宿やトレーニングに参加させてもらうようになって、そういう努力が報われたという感じがしました。僅差だったんですけど、練習が報われた上での勝利で、しかも前に負けている相手だったので、とても嬉しくて、本当に意味のある勝利だったと思います。パンチもスパーリングできて、頑張ってきて本当によかったなと思いましたね。野木さんには本当に感謝しています。
──トーナメント前から準決勝では山本選手と闘いたいと発言されていましたよね。
所 「いつかやり返したい」というのをずっと思っていたんです。前回の山本選手との試合に負けて、本当に……考えるだけでも嫌な時期もありました。だけど、いざ準決勝のリングに上がって山本選手と対峙したら、そういった思いというのは関係なく闘っていたんですよね。篤さんのおかけで頑張れた部分もあるので、篤さんにも感謝しています、はい。
■「自分自身、勢いというのを過去最高に感じています」
──そして迎えた決勝戦の相手は今成正和選手でした。
所 理想は決勝で今成さんと当たることだったんですけど、いざ今成さんと決勝で当たることが決まって、よくよく考えて、「本当に今成さんと試合するのかな?」と思ったりとか、「あっ、本当に今成さんとやるんだ!」と思ったりとか、全然実感がわかなかったんですよね。試合の前の日も「今成さんと試合したらどうなるんだろうか?」とか「優勝したらどうなるんだろうか?」とかいろいろ考えちゃって、ハラハラしたりして、あまり眠れませんでした。
──スイッチが切り替わったのはどの瞬間でしたか?
所 リングに上がるちょっと前でしたね。「もう開き直るしかない!」という。それで花道からリングに向かって歩いていって、リングの下から今成さんを見たんですけど、今成さんが本当に怖い目をしていたんですよ。ほんと人を殺しそうな顔をしていて、あまり顔を見ないようにしていました(苦笑)。当たり前ですけど、「殺されるんじゃないか?」という“怖さ”は練習では感じなかったところなので。2Rに足を取られそうになったときも、ほんと怖かったですし。ああいうシーンになったら逃げる気100%だったのでなんとか逃げられましたけど、あれがちょっとでも付き合う気持ちだったりとかがあったらやられていましたね。そういう怖さがあったというか、凶暴な動物とやっているような感じでした。まあでも、今成さんとは今まで寝技の練習をずっと一緒にやってきて、総合の練習はしていないんですね。そういう意味では、打撃は一緒にやったことがないので、自分のほうが有利だったというか、ズルいというか……。
──ズルくはないと思いますけど(笑)。
所 寝技の練習のときに今成さんにやられてしまうときは、大体同じようなパターンがあったので、それを勝村(周一朗)さんとかに質問してやられないようにしてきたんですけど、それも一緒に練習をしていたからそういう作戦を立てられたので、やっぱりちょっと汚いですよね。でも、この前に関しては結果を出したくて、「日本一」というのは本当になりたかったので、はい。
──試合後に「勝負に勝った感じではなく、ゲームに勝った感じで、勝ったという実感はあまりないです」ということをおっしゃっていましたけど、次の世界トーナメントでまた今成さんと闘うことになれば、しっかり勝負して勝ちたいと?
所 ……いや、まだベルトを巻いていないので、やっぱり勝ちにこだわりたいですね。一本は取りたいですけど……いやでも、そんなこと考えてられないですね。勝ちたいです。勝ちにこだわります。
──今年はご結婚もされて、ご自身のジムもオープンされて、日本トーナメントにも優勝。ほんと絶好調ですよね。
所 今はいいときだからいいですけど、これで負けがこんだりするとツラいですよね、きっと。でも、今はいい流れなので、あと3つ、頑張りたいと思います。なんとしてもベルトが欲しいので。
──バンタム級世界トーナメントは9・24FIGHT FOR JAPAN『DREAM.17』(さいたまスーパーアリーナ)で開幕。一夜明け会見ではビビアーノ・フェルナンデス選手との対戦を希望されていましたよね。
所 一昨年のフェザー級GPの準決勝で高谷(裕之)さんに負けて、ビビアーノと高谷さんが決勝で闘っているのを見て、そして去年の大晦日で再戦されていたのを見て、「ああ、あのとき勝っていれば、僕が……」っていうのを凄く思っていたんです。高谷さんに負けて決勝に行けなかったのが心残りとしてあるので、あのときの続きじゃないですけど、ビビアーノとやりたいなと思いました。
──最後に改めてバンタム級世界トーナメントに向けての意気込みを聞かせてください。
所 今、自分自身、勢いというのを過去最高に感じていて、前だったら「自分なんかが……」みたいな感じで勢いに任せるのを抑えていた部分があったんですけど、今はその勢いに任せて「行ききっちゃおう!」というふうに思っているんです。だから、今のビビアーノの話もそうですけど、バンバン発言もしていきたいですし、練習も出し切りたいですし、ガンガン行きまくって、チャンピオンになって、今年を最高の一年にしたいです。
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