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2010年3月30日

「僕の中にはMMAの神がいるのかもしれません」
DREAMフェザー級王者ビビアーノ・フェルナンデスインタビュー

3・22『DREAM.13』(横浜アリーナ)で行われたDREAMフェザー級GPタイトルマッチで、見事同タイトル初防衛に成功したビビアーノ・フェルナンデスにインタビュー。今後の抱負を語ってもらった。【取材日:2010年3月23日】

■「僕はこの世界で功績を残し、その模範とならなければいけないのです」

──DREAMフェザー級王座初防衛成功、おめでとうございます!
ビビアーノ とてもいい気分です。昨日はキックも多用したので足が少し痛いのですが、それ以外はうまくいきました。素晴らしいファイトをすることができて満足しています。
──昨年の王座戴冠と今回の王座防衛で気持ちの違いというのはありますか?
ビビアーノ 特に違いはないです。ここに結果としてベルトはありますけど、僕は何よりヨアキム・ハンセンという素晴らしいファイターと闘うということを重要視していました。自分で言うのもなんですが、自分は地に足が着いている人間だと思います。常に練習して常に成長していかなければいけないということを信条として持っています。僕がチャンピオンであるということは、周りの方が僕をチャンピオンだと認めているだけのことであって、自分はチャンピオンだからといって試合に取り組む姿勢や信条を変えるつもりはありません。チャンピオンであろうがなかろうが、目の前に立つファイターと全力で闘うだけなんです。ですから、先ほども申し上げたとおり、今回の試合に向けての気持ちというのも、防衛するという意識ではなく、ヨアキム・ハンセンという素晴らしいファイターと闘って勝つという意識のほうが大きかったんです。ハンセン選手と闘って勝てたことを神に感謝しています。

──ビビアーノ選手にはMMAの神も見守っているのかもしれませんね。
ビビアーノ 確かに、僕の中にはMMAの神がいるのかもしれません(笑)。だって、確かにここまでうまくいっていると思いますから。MMAに転向してから3年、8戦目でベルトを3つも獲りました。こういったことはMMAの世界では珍しいことだと思いますので、そういったことにも感謝しなければいけないと思います。それが自分の心の中にいる神なのか、MMAの神かは分かりませんが、自分に強い体とハートを与えてくださった何かの力に感謝しなければいけないと思っています。
──今回のタイトルマッチ前の紹介VTRは、ビビアーノ選手の厳しい少年時代にフォーカスが当たったものでした。あのような大変な時代を経て現在DREAMのチャンピオンになっているというのも……。
ビビアーノ 神に感謝すべきことです。僕の母は僕が8歳の頃に死にました。癌でした。家の前に救急車が止まり、近所のおばさんが僕の母が亡くなったとを泣き叫んでいました。その光景を窓辺から見たのをぼんやりと覚えています。それから、一時、ストリートで暮らすことになったんです。そのときはたまに裕福な家の車を洗ってお小遣いを稼いでいたのですが、その裕福な家の方の一人が私のことを気に入ってくれまして、食べ物や生活に必要なものを与えてくださったんです。いつからか、その家の子供とも仲良くなりました。そして、その子が柔術を習っていて、「一緒に道場に行こう」と誘ってくれたんです。でも、私にはお金がないわけですから、最初は道場の外から練習を見ているだけ。「楽しそうだな」と思いながら見るだけでした。するとある日、その柔術の道場の先生が「お金はいらないから君も練習に参加しなさい」と言ってくださったんです。その3週間後にある柔術の大会に出て優勝しました。それが私と柔術、格闘技との出会い。それから柔術のブラジル選手権、世界選手権にも優勝し、このDREAMのベルトを見ればお分かりでしょうが、MMAの世界でもベルトを獲ることができました。
──物凄いサクセスストーリーですね……。
ビビアーノ 皆さんに言いたいのは、すべては可能なことなんだということなんです。自分に制限を設けてしまっては、何も成し遂げられません。自分の中に潜む恐れに打ち勝ち、すべての制限を取り除き、全力でそのことに打ち込めば、何でも成し遂げられます。ブラジルには今も、かつての自分と同じような境遇の子供たちがいます。その子たちに今言ったことを分かってもらうためにも、僕はこの世界で功績を残し、その模範とならなければいけないのです。

■「K-1ライト級? それはいいアイデアですね」

──昨日の試合を見ていて打撃の進化が著しいと感じたのですが、ご自身ではどう感じていますか?
ビビアーノ 皆さんが「進化した」と言うなら、進化したのだと思います。例えば、「私はいい人です」と言う人がいたとしても、その人がいい人かどうかは周りの人が判断することです。確かに、打撃には力を入れて練習しています。ボクシングにはトニー・ペップというコーチがいますし、ムエタイにもレスリングにもそれぞれ優れたコーチがいます。自分の実感よりも、皆さんがそう思っているのなら、進化したのでしょう。非常に嬉しいことですが、その評価に慢心せず、さらに向上していきたいと思っています。
──K-1 MAXではK-1ライト級(63キロ以下)がスタートしますが興味ありませんか?
ビビアーノ それはいいアイデアですね(笑)。先ほども申し上げたとおり、自分に制限を設けてしまっては、何も成し遂げられません。次の次あたりで挑戦してみるのも面白いかもしれません。ブラジルには「庶民の声は神の声」という言葉があります。皆さんが望むなら挑戦してみたいです。私は柔術で5回チャンピオンになりました。MMAでもタイトルを獲りました。それでK-1でも活躍することができれば、後世に語り継がれるファイターになるかもしれません。
──その前にやはりDREAMでの次の相手というのが気になりますが、闘ってみたいファイターはいませんか?
ビビアーノ 先ほどの記者会見でも言いましたが、僕はDREAMが用意した相手と闘うだけです。
──しかし、笹原圭一DREAMイベント・プロデューサーもおっしゃっていましたが、最強の挑戦者と目されたヨアキム・ハンセン選手にも勝利したわけですから、現状、次の相手というのが浮かんできません。ここはビビアーノ選手が闘ってみたい選手と闘うというのが一番いい流れだとも思うのですが?
ビビアーノ なるほど、おっしゃることはよく分かります。すぐに答えは出せませんが、考えてみましょう。
──トップコンテンダーとしては昨年のフェザー級GP決勝戦で闘った高谷裕之選手の名前が挙がっています。
ビビアーノ もちろん、DREAMが高谷選手と闘えと言うのであれば闘います。しかし、あくまで僕の意見ですが、昨年の大晦日で負けた高谷選手は、挑戦者の順番で言うと一つ後ろになっていると思います。最近、勝っていて、実績を残してきている選手にチャンスはある、と私は考えます。
──なるほど。
ビビアーノ まあ、次の対戦相手が誰になるかはまだ分かりませんが、皆さんはそれを楽しみにしていてもらえればと思います。昨日のことは昨日のこと。また激しい練習をして日本に帰ってきます。また日本で会いましょう。