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2009年7月12日

“世界のTK”高阪剛氏がウェルター級GP&ワンマッチの見どころを徹底解説!
TK式『DREAM.10』短期集中講座【後編】

TBS&スカパー!DREAM中継の解説でお馴染み、“世界のTK”こと高阪剛氏が7・20『HEIWA DREAM.10 ウェルター級グランプリ2009決勝戦』(さいたまスーパーアリーナ)の見どころを徹底解説する「TK式『DREAM.10』短期集中講座」後編。今回は、ライト級ワンマッチの青木真也vsビトー“シャオリン”ヒベイロ、菊野克紀vsアンドレ・ジダ、ミドル級ワンマッチのメルヴィン・マヌーフvsパウロ・フィリォについてレクチャーだ!!

■青木真也vsビトー“シャオリン”ヒベイロ

☆Check Point①:「青木とシャオリンの寝技の違い」

DREAM公式サイトのBBSではどちらが勝つか熱い論争が繰り広げられていると聞きました。皆さん、やっぱり目が肥えていますね。おそらく、そんなに総合のこととか寝技のことを知らない人が、青木の試合とシャオリンの試合をパッと見たら、「同じようなことをする選手たちだ」で終わりだと思います。でも、違います。寝技のタイプとしてはまったく違うんですよね。

シャオリンは寝技になったら、最終的な極めの形に持っていくまでのルート、ゴールまでをある程度、決めて闘っていると思うんです。例えば、上のポジションを取った場合、そこから肩固めや腕十字など最終的に極める技=ゴール、そしてそのゴールに至るまでのルートを決め、そのルートからゴールまでの動きを忠実に実行していくタイプですね。

また、シャオリンは最後の形の状態になったら意地でもそこで極めたがるんですけど、そこからもう一つ、極まらなさそうだなと察知したらエクストラの技を用意してあるんです。予定していることがうまくいかなかったら、もう一度最初から組み立ててやり直すものなんですけど、極まらない状態からオプション的な技を出してフィニッシュに持って行ける。一本勝ちする技、プラス、エクストラの技があるんですね。そのエクストラの技は2〜3つ用意してあると思うんですけど、私が見る限り、そこまでの展開にはまだなったことがないので、実際のところは分かりません。

一方、青木はというと、特にゴールは決めず、その都度、ひらめきを実行していくタイプだと思います。最終的に極める技が、腕十字でも三角絞めでもなんでも構わないという感じですね。『DREAM.5』での宇野薫戦では、トップポジションを取っていて、返されながらも三角に行ったシーンがありました。また、『DREAM.4』での永田克彦戦ではマウントからフットチョークを極めましたけど、あそこからだったら腕十字にも行けただろうし、三角にも行けた。選択肢がいくつかあって、その中のどれで極まってもいいというスタンスなんですね。極まれば、極まった技がベストな技という。視野を広く持って、相手をコントロールする。傍目から見ると不利になったように見えても青木が常に主導権をしっかり握っていて、あとは何も決めないで最終的に何か決まればいいという感じで動いているんですよね。シャオリンが上からのアタックが多いのに対し、青木は上からでも下からでもアタックできるというイメージがありませんか? それは以上に述べた両選手のタイプの違いから来るものだと思います。

☆Check Point②:「パッと離れた瞬間の表情」

さてさて、そんな両者の一戦はどうなるのか? 私は、両選手が組み合って→一回動いて→パッと離れた瞬間の両選手の表情! この表情を見てどんな試合展開になるのか判断したいと思います。やっぱりファイターというのは、相手の体を触ったら力量というのは分かるもんです。そこで相手の力量を判断し、寝技勝負で行こうと思うのか、はたまた打撃で行こうと思うのか? さらに、例えば寝技で勝負しようと判断して、極めるまでの過程までもイメージすると思います。そこを表情で判断しようと思っています。

青木に関して言えば、物凄くいいミドルキックを持っているので、ミドルを軸に攻めていっても面白いですよね。ミドルを出しておいてタックルに入ったり、そこでもしがぶられても、そのままガードに入ればいいだけですから。一方のシャオリンは、ひょっとしたらボクシングをしてくるかもしれないですよね。そのボクシングは最終的に寝技の展開に持っていくための動きかもしれない……なんてことを想像するだけでワクワクしてしまいます。総合をよく知ってる方、好きな方にはたまらない試合になるでしょう!

■メルヴィン・マヌーフvsパウロ・フィリォ

☆Check Point①:「パウロの動じない心」

PRIDEで無敗を誇ったパウロ・フィリォがDREAM初参戦。とにかく、強いですよね。パウロを見ていて思うのは、多分、コーチとか師匠だったら、一番安心して見てられる選手だろうなと。そんなパウロの凄さを一言で言ったら、それはもう、あの“抑え込み”ですよね。あんなにお客さんの声を無視して抑え込み続けられる選手はなかなかいません(笑)。ある意味、“鉄の心”の持ち主というか、動じずに自分の試合に徹することができる。それがいいか悪いかは別として、そうすれば勝てるという確信を持っているからこそ実行すると思うんです。パウロは昨年11月に判定負けを喫して、総合での無敗記録が途切れた中での今回の出場ということになりますが、その“確信”を見せられるかどうか? 見せることできれば、DREAMミドル級の台風の目として活躍する可能性は十分にあると判断できます。

☆Check Point②:「メルヴィンの打撃の凄さ」

メルヴィンの打撃の凄さ。それはもう、怖いモノ知らずなところだと思います。あのスタイルはカウンターが入ると強烈な一撃になってしまいますが、まだそんなにカウンターでやられたってことは少ないはず。“攻めているつもりだったけど倒れちゃった”ということが連続であると、「これはちょっと、スタイルを変えないとマズイかな……」という思考になるんです。今年3月のK-1ではまさにカウンターを合わされ負けてしまいましたが、しかし1試合くらいそういうのが挟まったところで、「あれはたまたま」で終わりになるんです。選手ってそういうふうに思えるんですよ。カウンターを喰らっての敗北が続かない限り、あの怒濤のラッシュは止まらないでしょうね。

☆Check Point③:「パウロのタックル」

皆さんご想像の通りだと思いますが、パウロが勝つとするならば寝かして上を取ってパウンド、メルヴィンが勝つとしたらスタンドでの打撃だと思います。勝負のポイントは、パウロがどこでテイクダウンを取るか? メルヴィンのタックルの対処に関して言うと、ハッキリ言って、そこにテクニックはないと思います。ただ、相手のタックルに対する反応のスピードが人間離れしているんですよね。タックル→切られる→タックル→切られるを繰り返されると、パウロは断然きつくなるでしょう。だからといって、パウロがKOされるというのは、あまり想像が付かない。なんだかんだ言って、パウロは打撃の強い選手に対して“かわす力”は持っていますからね。だからといって、パウロが判定で負けるというのはもっと想像付かない……。う〜ん、本当にいいカードだと思います!!

■菊野克紀vsアンドレ・ジダ

☆Check Point①:「菊野のスタイル」

現在の総合格闘技を見ると、ハッキリ言って、必要な技はもう出尽くしちゃっています。そうなると、これから大事になってくるのは“独創性”。技の組み合わせだったり、パターンになってくると思います。そこは、みんなもう気付いているところ。どうすれば自分の持っている強い武器を相手に当てられるか? それを導き出すことが大事になってくると思うんです。しかも、いかに相手に研究されにくいものを探し出すかが“肝”になってくると思います。そういう意味では、克紀のスタイルは総合の中で誰もトライしたことのない分野なので、相手はちょっとした蹴りへの設定のズレが出て、ディフェンスが遅れたりとか、あとディフェンスのことを考えるあまりごく普通の攻撃でやられたりするんだと思います。つまり、克紀の何が一番いいかというと、あの独特の空手スタイルが“まだバレてない”というところなんです。あのスタイルに対応することは難しいと思います。これが今の克紀の強みと言えるでしょう。

その克紀のスタイルもいつかは研究されるときが来ると思います。そうなるとそこから迷いが生じ、自分のスタイルに自信を喪失するときが来るかもしれない。しかし、紆余曲折しながらもう一度、自分のスタイルに自信を持って立ち返るときが来るんです。そのような過程を踏まえることによって、自分の持っている技術に対して、信頼の厚みが増すんですね。一流の選手というのは、必ずそういうのを経験しています。しかし、克紀はまだそこに辿り着いていない状態ですが、現時点でかなり強いと断言できます。まだまだその“壁”にぶち当たるのは先のこと。『DREAM.10』で克紀の凄さを目撃してほしいですね。

☆Check Point②:「試合開始3分」

とは言っても、今回の相手は、あのアンドレ・ジダです。J.Z.カルバンにもエディ・アルバレスにも打ち負けなかった男です。しかし、もし今練習していることが試合の中で出せれば、アンドレ・ジダほど克紀が光る相手はいない……という感触があります。ジダの圧力や攻撃力は、間違いなく克紀が今まで闘った誰よりもあるでしょう。100%の力で打たれたら間違いなく倒れちゃうので、そこは注意したいですね。そして、あそこまで手足が長い選手とは闘ったこともありません。だからといってやることを変えるわけではなくて、ちょっとした調整をして試合に臨ませたいと思います。秘策? ありますよ。今までもDEEPで衝撃的なKO勝利を見せてきましたが、それとも違ったものです。もちろん勝算はあります。大ありです! 最初の3分間、とにかく集中してみていてください。何かが起こりますから。皆さん、楽しみにしていてくださいね!