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2009年8月14日

「来年からは僕中心で、ガッツリトップの選手たちと絡んでいきます」
菊野克紀インタビュー

『HEIWA DREAM.10 ウェルター級グランプリ2009決勝戦』で行われたライト級ワンマッチでアンドレ・ジダに勝利した菊野克紀にインタビュー。今後の目標について語ってもらった。【取材日:2009年7月21日】

■「本当に最高の舞台ですよね。幸せだなぁ(笑)」

──『DREAM.10』のアンドレ・ジダ戦は見事なKO勝利でした。一夜明けた今の心境から教えてください。
菊野 幻想で終わらずにホッとしています(笑)。本当に大したプレッシャーではないんですけど、ここで勝つのと負けるのでは全然違うというのが分かっていたので、勝ててよかったです。
──試合を振り返ってみていかがですか?
菊野 紙一重の部分もあったと思うんですけども、結果的にジダ選手が僕の周りを回った、僕の間合いに入りたくなかったと思わせたのは凄い収穫でしたね。ああいうガンガンくるファイターが僕の周りに入ってくることを恐れたっていうのは、凄い自信になりました。で、最後は最高の結果というか、三日月蹴りを決めてKOになったのでよかったです。
──ジダ選手のほうから見合うような感じであの間合いに発展しましたけど、あれは菊野選手のペースだったんですか?
菊野 完全に僕が“先(せん)”を取っている状態ですね。僕が攻めて、僕に動かされているという状態です。あの状態を作った時点で僕の試合だったと思います。あれは三戦(さんちん)の構えを使ってるんですけど、要は心の構えなんですね。攻撃の姿勢。気持ちが常に攻撃している。「僕の間合いに入ったら、絶対に倒す!」っていう気持ち、形を作ることが大事なんです。それに対して、ジダ選手が迂闊に間合いに入ってこれなくなった。その形を作れたのは日頃の練習の成果です。スパーリングをするときも、僕は凄い集中力でやっていますからね。
──集中力!
菊野 はい。僕のスタイルは、集中力が要(かなめ)なんです。フィジカルだなんだって言われますけど、一番は集中力です。
──試合中に笑みがこぼれていましたけど、MAXで集中すると笑顔になるとか?(笑)。
菊野 気持ち悪かったですよね(笑)。あれなんかは境地です。集中力の境地。これまでは集中するだけだったんですけど、それが今回からは笑いまで入って。プラスのことしか考えられなくなるんですよね。「俺のパンチのほうが絶対に先に入る」みたいな。
──集中力の境地に入れたのは、相手がジダ選手だからっていうのもありましたか?
菊野 あったと思います。最初、ジダ選手が睨んできたじゃないですか? 本当にもう、嬉しくて嬉しくて!(笑)。「こんなデカい舞台で、こんな化け物とケンカができるんだ!!」と。しかも、お金をもらえるわけじゃないですか? 本当に最高の舞台ですよね。幸せだなぁ(笑)。

──フィニッシュとなった三日月蹴りの感触はありました?
菊野 はい。ジダ選手のガードが下がって、顔色が変わりましたからね。攻めていってテイクダウンしたときは、(ジダは)全然力がなかったですし。
──三日月蹴りは最初から使おうと思っていたんですか?
菊野 最初のコンタクトで、僕がローキックを打った瞬間にジダ選手はカウンターを合わせてきたじゃないですか? あれで「僕のローに合わせてカウンターを狙っているな」と思ったので、「じゃあ、間合いをつめて殴り合いをしよう」と思って間合いをつめていったんですけども、それはジダ選手が外しました。「じゃあ、今度は揺さぶりをかけよう」とスイッチをしながら三日月蹴りを蹴っていって、ハイキックを打とうとも思ったんですけども、その中で三日月蹴りが入ったので、決めにいきました。
──「菊野克紀=三日月蹴り」。完全に代名詞になりましたよね。あのぉ、単純に気になるんですけど、蹴った足の指は突き指しないんですか?
菊野 出しどころを間違えるとします! 突き指じゃ済まないときもありますから、こっちが倒れることもあるんです。僕はミットやスパーリングで蹴ったりする中で会得していったんですけど、その間、何度も失敗して悶絶しています(笑)。
──自爆する可能性もあるんですね。
菊野 はい。だから、三日月ブームになったとしても、空手出身の選手じゃないと絶対にキツイと思いますね。
――空手の世界では当たり前の技なんですか?
菊野 当たり前ですよ。というか、基本技です。
──菊野選手自身も三日月蹴りを喰らったことが?
菊野 あります。僕は木山(仁)先輩に三日月蹴りで肋を折られたことがありますからね。凄いですよ! ボディブローの感覚とは違って、「ドーンッ!!!!」と突き抜ける感じなんですよ。もう最悪ですよ、最低です(笑)。


■「青木選手に振り向いてもらえるように、どんどんトップに食い込んでいけるように頑張っていきます」

──DEEPでチャンピオンになり、DREAM参戦も果たし、勝利も挙げました。菊野選手の次の目標は何になりますか?
菊野 やっぱりDREAMのチャンピオンですよね。来年からは僕中心で、ガッツリトップの選手たちと絡んでいきたいと思います。今年あと2試合して、来年も勝ち続ければ、ライト級のトップの選手たちと肩を並べられるし、そういうトップの選手たちと最高の舞台で勝負してみたいですね。
──これまで、そして先程の一夜明け会見でも、今後闘ってみたい選手に青木真也選手の名前を挙げていました。そもそも青木選手と闘ってみたい理由というのは?
菊野 今回のシャオリン選手との試合も勝ちに徹しましたけど、青木選手は勝つための最善の手段を取るんですよね。例えば、僕に対してだったら、徹底的に寝技で来ますよね。打撃には付き合わず、ひっついて寝技に引き込んでくると思うんですよ。それって、僕にとっては凄い脅威ですね。逆に僕は青木選手に絶対に組まれないようにして、組みにきた一瞬で仕留めるしかないですね。その一撃で倒さなきゃいけない。だから、要は真剣での斬り合いですよね。それって最高に面白くないですか? 本当に昔の侍同士の勝負みたいな。ガッと当たったほうが勝ちという。突き詰めた者同士が、一瞬で、スピードとか力技じゃなくて、どっちの集中力が研ぎすまされるかっていう勝負になると思うんですよ。0.001秒の差で負ける、どっちかが。そんな勝負をしてみたいんです。ただ、まだ僕が青木選手とやるには実績もストーリーもないですし、今のままでは青木選手になんのメリットもありませんからね。だから、青木選手に振り向いてもらえるように、どんどんトップに食い込んでいけるように、今年もまだまだ頑張っていきたいと思います、はい!