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2008年12月17日

夢の対決か、因縁の決戦か? 両者に聞いた桜庭和志vs田村潔司という一戦の意味。[PART.2/田村潔司編]

12・31『FieLDS Dynamite!! 〜勇気のチカラ 2008〜』(さいたまスーパーアリーナ)でついに実現する桜庭和志vs田村潔司の一戦。夢の対決か、因縁の決戦か、それとも……? この対戦が決定してから数週間が経過した、現在の心境を両者に語ってもらった。今回はPART.2/田村潔司編です。【聞き手:“Show”大谷泰顕】

■「お互いが背負ってる使命感は同じ温度なんじゃないかな」

──率直に現在の心境は?
田村 いまはもう普通ですね。平常心っていうか、試合に向けてっていう感じですね。
──まず、田村さんが桜庭選手に一番最初に会ったときの印象を教えてください。
田村 初めて会ったときの印象は………………ない。彼以外にも新弟子が いっぱいいたので、そのうちの何人かの一人という感じ。新弟子の入れ替わりがある状況だったから。初めての印象というのは記憶にないですね。
──じゃあ“新弟子の一人”という存在ではなく、“桜庭和志”という後輩がいると認識したのはいつ頃ですか?
田村 いやぁ……まったく覚えてないですね。
──桜庭選手と一緒にこんな練習をしたとか、何か覚えていることってありますか?
田村 ……いや、特に。そんなこれから試合をする相手の思い出なんか語ったところでしょうがないでしょう? 試合後ですよ、そういうこと言えるのは。
──じゃあ過去に試合をした時の桜庭選手の印象は? 
田村 いまはわかんない。それは観る人が決めていいと思うんで。あえて自分で言うのも面倒くさいよね。いろんなファンの見方もあるでしょうし、どんな試合をしようと観たいファンが集まってくるでしょうし。あんまり気にはしてないですね。

──過去に対戦をした時って噛み合う相手でした?
田村 いろんなカタチがあるんで……。なにが自分で納得する試合か、その年によって違うし。たぶんデビューしたての頃は嬉しいから自分の試合を何度も観たけど、いまは恥ずかしいから観ようともしないし。それはたぶん僕が成長したからなのかどうかはわかんないけど、自分の年齢によって自分の試合に浮き沈みがあるんで。
──振り返ると、まず5年前の大晦日にPRIDEで「田村 vs桜庭戦が実現か?」って騒がれたじゃないですか。
田村 どう言う事で騒がれていたかはわかんない! その部分で騒いでいるのかわからないから。マスコミが騒いでいたことに対して質問されてもわからないよ。
──そのとき田村さんは、桜庭戦に関して「一つの“駒”と“駒”という形で組まれるのはイヤだ」って言ってたんですね。
田村 いやぁ……どの部分でそう発言したのか覚えてないですねぇ……。ただ、彼との試合に関しては、ほかの試合とは同じようには考えられないから、そういう“駒”っていう感じでは考えたくないってことだよね。
──きっと桜庭選手からすると、いまや数少ない狙う側の立場に田村さんがいると思うんですけど、狙う側、狙われる側双方の気持ちがわかる田村さんとしては、どんな気分なんですか?
田村 狙うほうが楽でしょう。それは相手がサクってことじゃなくても、受けて立つのはプレッシャーがありますよね。なんだかんだ10年選手って実力的にはそんなに大差がないから、あとは試合の間(ま)だったり、試合勘なりでサバくっていうかやってかなきゃいけない。だから30歳くらいになって受ける立場になった頃から、だいたい自信と不安が半々っていう感じになりますよね。
──こないだの会見の際に、桜庭選手のほうから「素手で顔面アリ」っていう話が出て、そこばかりが強調されて伝わってますけど、会見直後にDREAMの公式サイトに掲載されていた桜庭インタビューを読むと、「(田村戦は)感情がグワァ〜〜〜っと絡み合うような試合にしたい。でも感情だけでは試合はできないから、素手で殴るという状況でどこまで自分が冷静に試合できるかを試してみたい」って言ってるんですね。
田村 いい試合になればいいんじゃないですかね、結果論で。
──桜庭選手は「逆に後輩にそんなこと言われたら、『お前が素手で来るんなら、ホント倍返しにしてやる!』」って言ってますけど。
田村 ケンカじゃないから。ケンカの発想でやるなら町中でやればいいんであって。ファンの人からすれば二人の入場曲で入場してリングインするだけで満足する人もいるだろうし、二人の感情がどうこうっていう、そこで括ってしまうと、まわりの一体感がなくなってしまうんで。だからさっき言ったようにリングインしただけで「お金を払ったかいがある」っていう人もいると思うんで、そういう人たちに向けて、何かメッセージを残したいなとは思いますけど。勝敗にしても僕が勝てっていう人も、負けろっていう人もいるだろうし。リング上がすべての答えです。
──ちなみに田村さんはこないだ、「三本勝負でやるのも面白い」って発言をしたじゃないですか。
田村 それは、せっかく決まったんだから1本で終わっちゃう のはどうなのかな、と思ったんだけど……。まぁ、その辺に関しては、お互いの発言内容に若干の温度差はあると思うんだけど、お互いが背負ってる使命感っていう部分では同じ温度なんじゃないかと思う。細かくいったら違いはあるだろうし、どの部分がどうっていうのはわかんないけど、あきらかにリンクする部分はあると思うけどね。

■「試合が決まると、もう全然迷いはない」

──そういえば昔、僕、田村さんと桜庭さんと一緒に呑んだことがあるんですよ。
田村 えっ? 個々で呑んだ事があるっていうこと?
──いや、三人で一緒に。その時の話を田村さんの『孤高の選択』という本のあとがきに書かせてもらってるんです。
田村 えぇ〜……? いつだっけなぁ…………。
──10年くらい前かな? だから、ファンや関係者の間では「Uインターの時の確執」みたいに思ってるかもしれないけど、決してそんなことはないんじゃないかと思ってるんですけど。
田村 いや、呑んでることすら忘れてた。覚えてないんだよね。
──Uインターを辞めたあとも、たまには一緒に呑みに行くこ ともあったわけでしょ?
田村 わざわざはないけど。
──ファンの中では、田村さんがUインターを辞めて以来、二人の仲は険悪だみたいなイメージがあるらしいんですけどね。
田村 知らない。良くたって悪くたって関係ないでしょ。人だから好きになったり嫌いになったりはするだろうし、マスコミにちょっと言ったことを大きく捉えられているかもしれないし、それはわからない。だって、全然道が違うんだから。(桜庭を)テレビとか雑誌で見ることのほうが多いから、そういう面ではブラウン管を通しての有名人的な目線にはなっちゃうしさ。会えば後輩だけど、会わなかったらそういう目線になりますよ。
──過去に試合をした選手の中で、闘ったあとに友情みたいな感情が生まれたことってありましたか?
田村 それは、人によるんじゃないですか? 現役でいるうちはそんなには思わないけど、基本的に一回試合をした相手ならちょっとは、多少はあるんじゃないですかね。一回も試合をしていない人には、その人がどうのこうのというのはまったく無関心だし、話したいとも思わないからさ。
──Uインターの時に桜庭選手とは3回闘っていて、その時「今度は第1試合で相手は桜庭だよ」って言われた瞬間があったわけじゃないですか。その時ってどう思ったんですか?
田村 昔のことは忘れた。
──でも、それまでずっと上のほうで試合をしていたのに、いきなり「第1試合だよ」って言われたわけでしょ?
田村 だから、その頃の昔話なんかしてもしょうがないから、いま。だってこれから闘うんだから、昔の話をしてもしょうがないでしょう? 仮に記憶があったとしても言わないよ。
──話を変えますけど、試合では相手と殴り合わなければいけないわけだから、自分で自分をマインドコントロールするじゃないけど、“闘う相手=嫌い”というふうに考えたりしますか?
田村 そりゃあ、対戦相手は敵ですからね。
──たとえば、桜庭ちゃんという女の子がいたとして、僕が田村さんに「桜庭ちゃんが田村ちゃんのことを好きなんだって。付き合ってあげてよ」って言ったとしたら、田村さんは「なんだよ、そんなの俺と桜庭の問題じゃん。お前は入るなよ」っていうような思いみたいなのが、マスコミとかいろんな人に対してあったって感じですかね?
田村 いや……たとえが全然わからない!!(笑)。
──あっそう?(笑)。たとえば、周りに煽られるというか、ほら学生の頃って「この子とこの子をくっつけよう」みたいに、仲人的な役割をする人っていたじゃないですか。
田村 いるね。
──そういうのがイヤだったのかなぁと思ったんですけど……。これまで桜庭戦を回避してきた理由っていうのが微妙にわからないんですよねぇ。でも田村さんって「ファンが望むからやる」という言葉を使う時があるじゃないですか。
田村 気分によってね(笑)。昨日言っていることと今日言っていることがまったく違うときがあるから(笑)。
──それはマスコミも主催者も一緒で、「ファンが田村vs桜庭戦を望んでいるから」とカードを組もうとしてオファーをすると。その時に主催者から「ファンが望んでいる」と言われて、それを受け入れられる場合と受け入れられない場合って、いったい何が違うんですか?
田村 いやぁ……それはわからないよ。その時の感情だったり、気分だったりなんだから。たとえば、「今日のメシは何を食おうかな?」と思ってカレーを食った時に、「なんでカレー食ったの?」って言われてもわからないじゃない? カレーを食いたいから食っただけであって、そこで「なんですき焼きにしなかったの?」って言われても答えようがない。提示されたもんに対して、食いたかったら食うし、食いたくなかったなら食わない。ただ、それを僕が思っていても、試合前に対戦相手に言うことじゃないし。褒めたりとかけなしたりとかもそうだけど。
──これまで「なんでやらないの?」って、一人や二人からじゃなく尋常じゃない数の人から言われたと思うんですよ。その時はどう感じていたんですか?
田村 周りが言っているだけでしょ、俺はべつに……。
──直接言ってきたりする人はいなかった?
田村 それはShow大谷(聞き手)という人くらいですね(笑)。「賞味期限は切れた」とか「旬はもう逃した」とか、そういうことを言われたんでムカついてたけど(笑)。
──あら(笑)。そこで逆に「だったらやってやろう」とかって思ったりは?
田村 いや、思ったことないね。
──でも、そう言われているにも関わらず、自分の道を貫ける田村さんって凄いなと思うんですよ。
田村 (サラリと)そんなことないよ。
──じゃあ、自分の選んだ道が「ブレているな」と思った時ってあるんですか?
田村 (ポツリと)あるよ。
──ある!? どの瞬間がブレてました?
田村 そうやって具体的にと言われたら思いつかないけど……。
──たとえば、パトリック・スミス戦(95年12月9日/名古屋レインボーホール。結果は1R55秒、ヒールホールドで田村の勝利)は?
田村 あの試合は……まあ、ブレていると言えばブレてたでしょうね。
──なるほどね。
田村 うん。それと何回か……「もう、どうでもいいや!」って時はあったね。新弟子の時にも一回辞めようと思った事があったし、選手になっても何回か辞めようかなと思った時があった。
──Uインターと新日本プロレスとの対抗戦が始まった頃に、 辞めたいと思ったことがあるのはメディアを通して伝わってましたけど、新弟子の頃に辞めたいと思ったのは、やっぱりキツくてですか?
田村 いや、練習とかのキツさじゃなくて、同期の人間が亡くなった時だね。一緒に練習していた仲間が亡くなった時。なんかその時の流れだったり、節目というのがあるからね。ただ、その同期が亡くなって「もう辞めようかな?」と思った時はあったけど、逆にそこで思い踏みとどまったのは同期のことが理由でもあるし……。わからないね。まあ、一言で言ったら、生意気なんでしょうね。
──自分のことを生意気だと思う?
田村 礼儀は正しいと思うけど、仕事のことになるとダメだね。でも、多少妥協というか、「その時の時代の流れに乗らないとな」というのはあるよ。でも、いい面も悪い面もあるんだよね。素直に「ハイハイ」と言っていればいい方向に進む時だってあるし、自分のやりたいことにこだわったら、結果いいことが起こったり。迷い人ですね(笑)。
──今年の大晦日に向けて、いまも迷っている?
田村 いや、試合が決まると、試合に向かっているうちはもう全然迷いはない。その試合に向けて練習して試合して、終わったらまた迷うと。
──確かに誰もが人生に迷いながら成長して行くんでしょうけどね。ちなみに、同じくDREAMの公式サイトにあった話ですけど、ファンからの書き込みに「今大会のサブタイトルを『PRIDE. 35』にしてほしい」っていうコメントがあったんですね。去年の春に田村、桜庭がリングで並んだのが 『PRIDE.34』だったから、 その続きっていう意味で。
田村 それを俺に聞くのも意味がわかんないけど、権利関係の問題でそんなの無理に決まってるでしょう?
──まぁ、現実的にはできないですけどね。
田村 まあ……だったら、平仮名で「ぷらいどさんじゅうご」にすればいいんじゃないの?(笑)。